妄想

火星の砂漠にて

デミルは四散したメディの肉片を寄せ集め、人の形に組み立て直した。それはどうみても廃工場にこびりついた赤錆のような色と墓守に見捨てられた菊のような腐臭を発するただのゴミでしかなかったが、デミルはそれを生きていた当時の彼女のように笑わせ、怒ら…

なんちゃってクリスタル

目覚めると青白い水晶の中にいた。冬の白樺の木肌のようにちりちりと冷えた表面にそっと手を触れて中を覗きこむと、緑や青や黄色やオレンジの閃光が瞬く星のように輝いていて、僕の意識を再び遠い夢の世界へと誘った。気を失う直前ふと仰ぎ見た天井には昼下…