ROSSO「DIRTY KARAT」(ネタバレ注意!)

1.アウトサイダー
2.1000のタンバリン
3.LEMON CRAZY
4.CHAD IN HELL
5.ハンドル・ママ
6.ピアス
7.TULIP
8.動物パーティー
9.Sweet Jimi
10.人殺し
11.君の光と僕の影
12.火星のスコーピオ



そういえば聞いてなかったな、と思って、今更。
去年「RAVEN」名義で発表されたアルバム「限りなく赤に近い黒」が微妙な出来だったのであんまり期待してなかったんだが、全体的な感想を言えば、悪くなかった。わかりやすいし、しかも挑発的。


ここでいう「わかりやすさ」とは、基本的な曲作りがテク披露やら音楽的実験やらに色気を出さない硬派でスタンダードなものであること、でもあるし、ハッタリをハッタリとして裏の意味やら解釈やらを匂わせることなく開示しているということでもある。思い付きでやってるだけのところはすぐにそうと分かるし、逆に裏に何らかの意図がある場合もすぐにそうと分かる。歌詞にしろ曲にしろそうだ。
多分、・・ブランキーはともかく、チバの前身バンド、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはこういう歌詞と音の作り方をした事は無かった(と思う)。ミッシェルにとってハッタリはある種の意味深さと不可分であり、それが良くも悪くもファンの間で熱狂的な崇拝が吹き荒れる原因にもなったのだと思う。


ROSSOはその点、あくまでも自分に正直な、等身大のロックをやっていて、過剰な賞賛や祭りあげを拒否し、ミーハーなファンを挑発しているようにも見える。

いかれちまった景色が そこには広がってんのさ
あんたにはきっとなんにも見えねぇだろうけど(「アウトサイダー」)

子供っぽい「純粋さ」ばかりが賞賛されがちな音楽という芸術メディアにあっても、俗世を通過すること無しには見えない風景もある。ジャケットでも終始落ち着き払ったポーズをとっているこの4人のおっさんからは、百戦錬磨の勇士としての余裕と冷静さを感じる。


それを寂しいと感じるのは、僕が普段音楽を聞かないミーハーなファンに過ぎない一人だからなんだろうな。


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以下、収録曲それぞれについて箇条書きで。
・シングルとして<2>とともに先行発売された<1>は、ギャング映画のテーマソングみたいで大変カッコよろしいのだが、この曲に限らずROSSO全体の特徴として、ベーシストである照井氏が中核だからなのか、ブランキーやミッシェルと比して、音的な遊びというか基本的なコードからはみ出した(崩れた)部分が少ないような気がする。素人なので技術的な事は全然わからんのだけど、<8>みたいにベースからして遊びまくってる作品の方が自分は好みだな。
・<2>の全体に漂うやさぐれ具合がとても好き。
ブランキーの「SOON CRAZY」への返歌に違いない<3>は、どーなんだろ。ブランキーやミッシェルと比較されるのが嫌なら、このアルバムに入れるべき曲では無かったような気もする。それとも、ミッシェル時代からブランキーファンだったチバ氏のただのお遊びなんだろうか。
・<4>は本作の中では一番意味深な曲かも知れない。

キャンドル・メイカーは電気のせいで仕事をなくした
そう思っていたんだけど どうやら違うみたいだ

磔になった悪魔が言う うすい笑みをこぼしながら
それでも俺は生きるぜ 地獄めぐりの旅を

今のROSSOの立場と照らし合わせて見れば、いくらでも勝手な解釈ができそうだ。しないけど。
・<5><6><7>はどれも面白いけど特に感想なし。<7>の歌詞、「ゲチョビンが14才とATMの前でキスしてる」ってのは「Voodoo Club」の「ムチムチボディー」に続くダサカッコ良さ狙い路線?
・<8>はベースの照井氏までも積極的に遊びまくっていて、大変楽しい曲。恐らくチバ氏も自分が何を歌ってるのか全くわかってないと思われる支離滅裂な歌詞も大好きだ(笑)。
・<9>は7分を超える長尺だが、2転3転する曲展開で全く飽きさせない重厚な大作。こーゆーのって基礎的な技術がよほどしっかりしてないと出来ないよなー。
・<3>が「SOON CRAZY」なら<10>は「Bang!」か。チバ氏のギターはファンからはあんまり評判がよろしくないが、この曲に関してはボーカリスト兼任者ならではのエモーショナルな響きがあって、僕は非常に好み。こういう傾向の曲を今後もっと増やしてもいいかも知れない。・・・と思ったら最近発売したシングル「バニラ」に「ブランコ」って題の別バージョンがあるのか!
・<11>、どうでもいいことだが、RAVENの「限りなく赤に近い黒」といい、長タイトルの村上龍的なセンスはどうにかならないんだろうか・・・・曲はムーディーでカッコイイけど、ちょっと長すぎ。
・<12>は、いかにも(実質上の)ファーストアルバムを締めくくるに相応しい明るい曲。何となくブルーハーツの「さすらいのニコチン野郎」を思い出しました。



DIRTY KARAT

DIRTY KARAT