「鋼の錬金術師」10巻(荒川弘)(ネタバレ注意!)

毎回、上手いなあと感心させられるのは、作者による読者への「情報」のばら撒き方。ブラフと真実を巧みに織り交ぜながら、大筋の話はしっかりと核心に近づけている。


この巻に収録された話も一話一話の情報密度が半端ではなく、ネタ一つ一つに詳細に言及していたら日が暮れてしまいそうな感じ。ざっと見ただけでも、ホムンクルスのエネルギー源が「賢者の石」(と呼ばれる物体)であること(38話)、敵の本拠地の所在がセントラル中心部の地下であること(39-40話、町全体を巨大な錬成陣にしようとしている?)、滅亡したクセルクセス王国の生き残りが二人(東の賢者と西の賢者)いたこと(40話)、ウィンリィの両親を殺害した犯人がスカーと同一人物かも知れないこと(41話)など、枚挙に暇がない。このあたりはいかにも月刊誌連載のアドバンテージが出ていると思う。単に伏線やストーリーを練るだけでなく、細かな設定面まで気を回せるのは月刊誌ならでは(少なくともジャンプ漫画には絶対無理)。


40-41話のロス少尉生き残りのトリックなど、話的には僕のようなボンクラ読者でも想像がつくベタベタなものなのだが、描かれた過程の緻密さと情報量の多さで読者を白けさせず解決するのは凄い。その手腕の鮮やかさから仕掛け人のロイに以前にも似たような作戦を使った過去があるのでは・・などと余計なところまで邪推できるようになってるし。


その他細かいところでは、エンヴィーは「潰す」という表現を使っていることから最終形体に変身するとこれみたいになるんじゃないかとか、ランファンに識別されなかったことから「憤怒のラース」こと大総統には命が一つしかないんじゃないかとか、いくらなんでも証拠提出も無しに信用するなよホークアイとか、ホムンクルスが持つ「命」の総数は犠牲になった人間の数に比例するんだろうなとか(つまりセントラルの人間全員を犠牲にすれば・・ラスボス誕生?)、「お父様」とホーエンハイムは双子の兄弟かもしくはどちらかがホムンクルス製造技術の応用で作られたコピーなんじゃないかとか、気がついたこと、言いたいことは色々ありますが、まあこれらは所詮憶測の域を出ませんね。
何はともあれ、今巻も変わらずおもしろかった。次巻にも期待です。


鋼の錬金術師 (10) (ガンガンコミックス)

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