「FlashMaker Contest The4th」感想・その2(「新兵器と朝鮮戦争」「snow works」「2GET」「少年の日のヒッキー」「流石討論」「MG系」「魔方陣/速決」「夏休み、お父さんの車で…」「Hyper Lunacy」「LILLIA」)(ネタバレ注意!)

5月5日に開催された同イベントの感想です。作品数が膨大なため、数回に分けてエントリーを投稿しています。
このエントリーは前回のエントリーの続編です。

マッド・アマノ氏の諸作品を思わせる風刺系(?)Flashです。最近ではこの手のゲリラ的馬鹿Flashはその総数を減じましたが、写真画像に口パクで喋らせたり、無茶な手段で現実的問題の解決を図るという基本構造(?)は変わっていないようで、本作の後半の怒涛の展開は初期のドラワサビ氏のそれをも思わせ、氏のファンとしてはどことなくノスタルジーを感じました。
にしても、はやはり生物兵器だったのですね・・・通りで眼光が鋭いと・・・・

「雪の結晶」をデザインシンボルとして用いたユニークな作品です。シャープできめ細かな白線の美しさと、さらりと書き下ろしたような作者氏直筆のイラストが鮮やかに組み合わさって、単に美麗なだけに留まらないスタイリッシュな雰囲気を醸し出しています。


黒白がモザイク的に組み合わさった背景に乗せられた不安定な描線の動きと、抽象的でメランコリックなイラストの風景が実にミステリアスで、見るものの不安感を煽ります。ともあれ、全体に比較して幾分かステディネスなラストシーンは、鑑賞者が無事に現実の世界に戻るための作者氏から渡されたパスポートのようにも思え、安心を覚えました。

num1000」フォロワーな外面にcranky氏の楽曲の使用と、随分とオーソドックスな体裁に見えるPV作品ですが、シーンの移り変わりごとに背景色や文字色を次々と変化させていたり、見せ場のシーンでポケモンフラッシュばりのスパーク演出(笑)を試みたりと、各所で実験的な試みが為されており、最後まで飽きずに見る事ができました。
決められたフォーマットの中でのミニマルな実験を経て、作品そのものを実験とするようなチャレンジをすることが出来れば、更なる表現力の飛躍が得られるのではないでしょうか。

ヒッキーのクリスマス」の系譜に連なる感動系作品・・・・と見せかけたブラックジョークFlashです。
意図的であろう作品描画のチープさ加減やメインストーリーの恐るべきベタベタぶりは、作品に込められたアイロニーを考慮すれば正解だったと思うのですが、果たしてラストシーンまで観客をきっちり引き付けられるものなのかどうかには疑問も残ります。いっそ、恐ろしく気合の入った内容の方がラストシーンの逆転をよりショッキングなものにしうると思うのですが。

教科書的なネタFlashの外観を持ちながらところどころ作者氏の奇矯なオリジナリティが見える作品です。オープニングで突然「このFlashを見ますか?はい/いいえ」の選択肢が表れ、「いいえ」を選ぶと本当に別なページに飛ばされてしまったり、流石兄弟モノなのにBGMが8ビートのテクノだったり、討論の対象となる「鉛筆」と「シャープペン」にHPが設置されていて、一度の攻撃でゲージが半分まで減ったり・・・・・・・・・。


作者氏がどこからこのような奇妙な着想を得たのかは最後まで謎のままですが、この「ギリギリで陳腐さを回避する絶妙なズレっぷり」が天然のものであれ意図的なものであれ、今後もこのような作風を保って欲しいところではあります。

意識を失うように途切れる音、最終的に「DOWN」のままで終わってしまう展開など、随所に強迫観念に取り付かれたような不気味な描写が見え隠れしています。
あまりに短くシンプルな作品だけに、変に作品を解釈しようとするとあらぬ方向に進んでしまいそうではありますが、「UP/DOWN」が事物の勝敗を暗示するものだとすれば、本作全体が何らかの闘争に巻き込まれた結果の「敗北」を暗示しているかのようでもあり、どこか後味の悪い恐怖感を覚えます。

「魔方陣」は哭蔵氏風のPV作品で、あえてレトリックを使わないシンプルなゴシック体による連続的演出のダイナミズムがあります。何故「魔方陣」というこの手の勢い重視のPVには不向きとも思える題材を選んだのかはよく分からないのですが、シンプルな黒の背景のお陰で、美麗なイラストと次々現れる文字の面白さが際立っていました。
「速決」は上記した「MG系」にも似た作風で、奇妙な二元論に囚われた世界を描いています。一見爽やかな色使いとダークなテーマのミスマッチが不可思議な感触を生み出しています。

真夏の美しい青空と狂気を孕んだ漆黒の闇とのコントラストが、背筋が凍りつくようなパラノイアックなストーリーと絡んで、まさしく白昼夢としか形容しようのないようなシュルレアリティックな世界観を形作っています。
地平線に向けて果てしなく広がる海、全身を焼けただらせた男のやけに冷静な物言い、意味不明だけれどもどこか説得力のあるラストに至るまで、全編が静的なサスペンスに満ち溢れた異色の傑作です。


作者氏は今年14歳の中学生(!)とのことで、今からこういう作風だとやや将来が心配になりますが(←大きなお世話)、このような情緒不安定な世界は思春期にしか創造し得ないものかも知れません。

タンバリンで奏でたクラシックの名曲のような絶妙なリズム感と軽妙洒脱なデザインワークのある秀作です。
まるで「韻」を踏むかのように敏活に跳ね回るシンボルは、ポップなBGMと連動して見るものの心を揺さぶり、それでいて疲れを覚えることの無い鮮やかな色使いからは作者氏の清清しいまでの思い切りの良さを感じます。これといった修飾を凝らしているわけではないにもかかわらず、ちっとも野暮ったくならないテキストの使い方も出色です。


前半の勢い任せのスピード感も良いのですが、特に中盤、「Nightmare」の文字が出現してからの怒涛の展開は「こんな夢ならずっと見続けてもいいな・・・」という気持ちにさせてくれます(笑)。

少女漫画風味のオシャレな絵柄で、少女期の変身願望をリアルに描いた作品です。
恐怖のラストに辿り着くまでの論理展開がやや不明瞭なため、「なぜそうなったのか」が分かりにくくなってしまっている面もあるのですが、感性の赴くままに描いたのだろう、執拗な描き込みが為された単体のシーンの印象深さはガチガチのストーリープロット上では実現しにくいものであるとも考えられ、そのあたりのバランスを取るという意味では、本作のような描写方法が最も適切なのかもしれません。どちらかというと左脳よりも右脳で見て楽しむタイプの作品になっていると思いました。



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