「FlashMaker Contest The4th」感想・その3(「CARNIVAL」「トリ○アのパクり」「無題」「Mindless Automaton/MAD」「Bit night-cruise Rock'n'Roll」「またデスマーチ!」「Ink Jet」「FMC4ED 〜少年の日の想い出〜」「ending4」)(ネタバレ注意!)

5月5日に開催された同イベントの感想です。作品数が膨大なため、数回に分けてエントリーを投稿しています。
このエントリーは前々回のエントリー前回のエントリーの続編です。

混沌を混沌のままぶちまけたような作品です。タイトルは「CARNIVAL」というよりも「狂騒」とでも言った方が適切で、とにかく思いついたシンボルを片っ端から取り込んだような奇矯で纏まりのない世界が展開されています。
「party 4u」を使っていることから「num1000」風のオーソドックスなPVかと思ったら、突然リオのカーニバルの写真画像が挿入されたり、シンボル操作型の作品でもないのに棒グラフ状のリズムメーターを設置したり、お約束的にモナーやギコのイラストを使っていたり・・・・・・・・。恐らくこの”ごった煮”感は意図的なものなのでしょうが、それにしてもこれだけ堂々と未整理の世界を見せつけられるというのは、作者氏の何者も恐れぬ自由奔放な豪胆さの表れなのでしょうか。


個人的には最後に登場したリアルガチャピンが気になって仕方ないのですが、一体彼は何のためにこの世界に登場したのでしょうか?(笑)

「30分で作った」と作者氏自ら公言している割には作中のレタリング等は妙に凝ったものになっていて、きちんと音声に同期したリズミカルな所作を為すようになっています。作成時間に依拠しない、野球の「流し打ち」のようなテクニカルさは、作者氏の自力をそのまま暗示するもののようにも思えます。
次回は是非本格的な作品による参戦を期待したいところです。

  • 無題

未完成につきリンクは張らないで欲しいとの事だったので、指示に従います。
WebFeats Design \\ Whiz-Bang」のコピー作品になる予定だったのでしょうか?同趣向には「vintro」という先達がいるものの、初級者には敷居が高そうです。

「Mindless Automaton」は映画のCM風の作品で、哀感に満ちたペシミスティックな世界観と青春的なストーリーの概要を過不足なく説明してくれます。美麗なグラフィックやセンチメンタルなBGMに併せた静的な演出など、細部に至るまで完成度が高いのですが、ライトノベル風のキャラクターデザインとFlash自体の持つ雰囲気がややミスマッチであるようにも思いました。
「MAD」はリアルな女性のイラストを用いた単発のMG作品なのですが、どちらかというとこちらのイラストを「Mindless〜」に回した方が適切だったような気もします。好みの問題もあるでしょうが・・・。

写真画像をふんだんに用いたスタイリッシュなPV作品です。
詩的なモノローグの表示一つにも細かに凝ったエフェクトがあり、見るものを飽きさせない工夫が随所に為されています。特に、後編で登場する一見シンプルな白線にしか見えないシンボルが複雑な文字列の集合だと判明するシーンや、音にきっちりと同期して動く赤と青の導線の地味ながらも作中での大きな役割の果たし方が、見た目の派手さより玄人好きのする「隠れた美しさ」への作者氏のこだわりを象徴していて、「夜しか生きられない月の独白」というテーマと実にマッチしていたように感じました。
写真選びもいちいちセンスがよく、作者氏曰くほぼ一日でかき集めたものだとは思えませんでした。

「テクニックより魂」を地でいくアスキーアートFlashです。
最近この手のAA作品はアニメーション系Flashの台頭ともにネタ系ゲリラFlashと同じくその数を減じているのですが、本作の完成度の高さはAAオンリーでも題材に工夫を凝らせばこれだけ面白いものが作れるという証明の一つになるのではないかと思います。
有名な電波ソング巫女みこナース」をわざわざ替え歌化して仕込み(妙に野太い声でしたが作者氏の肉声にエフェクトをかけたものなのでしょうか(笑))、恐るべきリアリズムを持ったストーリー(というか実体験?)をその悲劇性を軽妙に笑い飛ばすような「エンタテインメントとして」描き出しています。プログラマーデスマーチ体験についてはこちらのサイトなどを参考にしていただきたいのですが、普通なら思いだしたくもないだろう悲惨な経験を、あくまで自分の「持ちネタ」として取り込んで芸にしてしまう精神のタフネスさに脱帽です。

うーん、皮肉ではないのですが、未完成品を参加フリーの企画にわざわざ提出する意図が分かりません。後から完成したものを普通に発表した方が作者氏にとっても有益だと思うのですが。

イベントの大トリを務めるに相応しい一大傑作です。


寸分ズレない完璧な音同期を見せ付ける冒頭から、スクリーンサイズを変化させるという大技(失敗すると目も当てられないがバッチリ決まればこの通り!)、圧倒的な画面密度を誇る中盤以降の展開に至るまで、一部の隙もなく精巧に作りこまれた渾身の大作で、これが引退作品になるという作者氏の思い入れの強さが画面全体から爆発的に伝わってきます。


写真画像を加工して用いたと思われる鮮麗な背景&スピード感溢れるシンボルのムーブメントが生み出す天空を飛びまわるようなダイナミズムと、徹底してディティールに拘った文章に込められた感懐による歴史的な名演説を聞いた後のような感動は、イベント用Flashの枠を超えて伝わる作者氏の情熱の表れとも思えます。
作品の完成度を踏まえればこれが最後となるのは口惜しく、作者氏のいつの日かの復活を望みます。

イベントのエンディングロールFlashです。
上記した「FMC4ED 〜少年の日の想い出〜」が単体の作品としてあまりに完成されすぎているが故に背負えなかった部分を補完した作品で、製作者諸氏への慰労の意味が込められているのでしょう。「手抜きでスイマセン」とのコメントがありましたが、いやいや、これも立派な仕事だと思いますよ。

  • 総評

若い作家の活躍が目立つイベントだったという印象です。ラストで大傑作「FMC4ED 〜少年の日の想い出〜」を送り込んできた作者氏はまだ現役の高校生との事ですし、「夏休み、お父さんの車で…」の作者氏は中学生、その他にも(プロフィールなどで推察する限り)まだ学生の作者氏が多く見られました。
FlashMaker」はMXと比して価格が手ごろな上に公式サイトからは体験版もダウンロードできるので学生の人気が高いと聞いてはいましたが、これほどに若手の作者氏に集中して使われているとは驚きました。


今後も、新人作家の登竜門としての位置付けのもと本イベントが継続されることを願います。
素晴らしい作品を作られた作者の皆様、本当にお疲れ様でした。



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