「フラハクおんらいん」感想(「FLASH EXPO'05 Opening Splash【FLY UP TO SKY】」「FLASH EXPO -OP-」「青春イングリッシュ」「私とPCとFLASHの繰り返される日常」「ブラウニー」「ドクオ大爆笑2005」「ネタバレだいじぇすと」)(ネタバレ注意!)

更新が遅れて申し訳ありません。当方で何故かFlashが観覧できなくなる原因不明のトラブルが多発しており、深夜になるまで状況が改善されませんでした。
オンラインで公開済みの作品の感想は既に書いているので、今回初めて公開された作品の感想を書きます。
てっきり未公開の全作品が発表されるものと思っていたのですが、製作者側の都合で新たに追加された作品はオープニング含め全7作品のみのようです。


なお、今回感想を書いた作品は17日までの限定公開となっていますので、見たい方はお早めにどうぞ。

ドライなブルーブラックの背景にたて続けに現れる大小さまざまな幾何学記号、「ああまたありがちなMGか」と案ずるなかれ、少女のイラストの登場あたりから自分で提示した「スタイル」をぶち壊しながら突き進む快楽こそがこの作品のキモなのですから。


イラストの少女にしろテクストによるメッセージにしろ、純粋なMG作品として捉えるなら明らかに「蛇足」の部分を本作は悉く強調することによって、陳腐なスタイリズムに押し固められることのないオリジナリティを作品に付与すると同時に、やがて本来はそれが(Opening Splashとしての)本作の目的のはずの「カッコ良さ」「ノリの良さ」といったメタ・メッセージを破壊、やがて受け手は否応なしにスタイルの破壊者=異分子であるイラストやテクストに注目せざるを得なくなり、結果的に「イベント開始の先導役」としての役割をきっちり果たすというアクロバティックな難技をさらりと履行しています。
音同期のタイミングやシンボルの使い分けといったPVとしての「基本」も当然ながら申し分ないレベルで、積み上げた基礎から鮮やかに応用技を使いこなす巧の技を存分に楽しめます。

セピア調の古めかしい背景に、本イベントに到達するまでの製作者達の苦労を物語るような「過去」の寓話が設置され、ノイズが溶けてストーリーが「未来」へ移行すると同時に、嵐のような狂騒の溢れるオープニングムービーが怒涛のように開始していきます。


特に前半部のやや過剰なまでのアジテーションの中で連呼される、製作者達を鼓舞するような数多くの言葉と、「Flashはやめられない」とのいささか悲壮な決意表明には、夏に開かれるオフラインイベント「flash★bomb」への牽制というか、同イベントとの差別化を図ろうという意図があるように思えました。
両イベントに対する批判ではないので誤解しないでほしいのですが、基本的に人気投票で選ばれた少数の製作者しか参加できない「flash★bomb」と、自由参加の「FLASH EXPO」(勿論運営者側の選考もある程度はあったはずですが)では当然参加のハードルが全く違うのですが、それが必ずしも内容の優劣に繋がらないことを証明する意味合いも(イベントとしての)「FLASH EXPO」には込められていると感じるのです。だからこその「悩める職人への鼓舞」と「笑い(ネタ)を主軸とした作品作り」なのでしょうし、その作家性から「flash★bomb」に参加できない製作者をきっちり掬い上げようという主催者側の覚悟が、本作には十二分に込められているように見えます。
今後「FLASH EXPO」がイベントとして継続していけば、そのような差別化がより一層図られていくのではないでしょうか。


作品自体の完成度は細部に至るまで文句のつけようがないレベルなのですが、やはり本作は是非とも音声付きで見るべき作品だと思うので、著作権問題がクリアできなかったとしても別にBGMの詳細を記すなどして頂ければなお良かっただろうと感じました。あの感性のカーニバルのような後半に、曲が完璧に同期した時の快感と言ったら・・・・・・。
実は曲を流すにはある方法があるので、是非とも色々試してみてください。ヒントは画面上部にあるようなないような・・・・。

突拍子のないオープニングの演出にどこか間の抜けたボーカルがBGMとして重なる時、既に作品の方向性は決定付けられ、既存作品をパロディナイズして大胆に取り込みながら、何者も恐れないパワフルな勢いを持ってストーリーが展開していきます。
とことんデタラメでいい加減な世界観にもかかわらず、「正しい発音の仕方」「国際化時代の生き抜き方」などの変に真面目ぶったテーマを(ワザと)選んでいるところが可笑しくて、特にアイロニーや悪意はないのに妙に乾いた笑いを浮かべてしまいます。
線の太い絵柄も可愛らしくて親しみやすく、大勢でわいわいと見るには最適なタイプの作品でしょう。良い意味で「下らない」、パーティー/イベント向きの作品と感じました。


ちなみに、今回のオンライン公開版ではカットされているワンシーンは、あの女の子が●o●●●o●●するシーンらしいです(僕も知らない)。

Flash製作者の日常をメタ化して提示するという手法は「PINK☆」でおなじみですが、本作の場合製作者であるnae氏が女子高生ではない(笑)ので、「PINK☆」に込められたような当事者性よりもメタ化されたアレゴリカルな視点に解釈を求めるのが自然と言えるでしょう。


壁に貼られた「締切厳守」のポスター、ハングアップしたPCの修理、やがて香る焼いものかほり、停電によるデータの破壊、ほんの出来心で見に行った映画から思わぬ収穫を得る、などなど、PCで何かを創作した経験のある人なら一つ二つ思い当たるであろう事象が的確に配置されており、寓話としての普遍性を考えるなら相当配慮が行き届いていると感じました。
ただ、ギャグかもしれないとはいえ、主人公のいじっているPCのOSがWindows98というのと、作られたアニメの敵役が先行者というのは、あまり多数の共感を得られなさそうだと思いましたが(笑)。


著作権への配慮からか表向き公開されているのはBGM無しのバージョンなのですが、流石は「S2F」のnae氏だけあって、アニメーションの挙動にいちいちリズム感があり、最後まで退屈することなくテンポよく見進める事が出来ました。

ストンと落ちる落語のようなおかしみがあります。悪魔をイメージさせる恐ろしげな背景に書かれていく堅そうなコピーが、突如として「味噌汁」という庶民的な単語をを使用するおかしみ、ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」を演奏しつつとことんナンセンスなストーリーを展開させるおかしみ・・・・・・基本的にはワンアイディアの「一発ギャグ」にもかかわらず、長丁場を持たせる演出の工夫と画面の力の入れようが、内容のしょうもなさとのギャップとなってユニークでエキセントリックな雰囲気を仕立て上げていました。


ところで、実はこのFlashがもっとも凝っているのはタイトルのつけ方ではないかと思いました。ブ、ブラウニー・・・・・・。

平凡なショートショートかと思いきや、その配置からして強烈なカウンターが仕掛けられている作品です。
普通、ショートコントで「第1話」「第2話」と順番にコントが続いていったら、当然その後も「第3話」「第4話」とコントが続くものだと考えますよね(僕のような凡庸な人間の場合ですが)?ところが、本作の構成はそのような形になっていません。具体的に記しますと、

第1-a話「ドクオとかあちゃん

第2話「ドクオの旗上げ」

第1-b話(第3話)「ドクオとかあちゃん

第3話(第4話)「もしも・・・こんな○○○ーがあったら」

第1-c話(第5話)「ドクオとかあちゃん

このように、全5話が順番に12345と続いていくのではなく、1-a、b、cと続く「シリーズもの」である「ドクオとかあちゃん」が、それぞれ独立した話である2話と3(4)話の間に挿入されるという、一見単純に見えて複雑な構成を持っているのです。たまたまネタが浮かばなくて同じ話を使い回したのではない事は、上記事項を鑑みれば一目瞭然です。
当然ながら、123と連続的に話が続くものだったと勘違いしていた観客(僕ですが)は驚愕しますし、そうでなかったとしても、本作の面白さをその内容=ネタでしか捉えようとしていなかっただろう多数の観客の頭に爆笑の一撃をかますには十分な仕掛けだと言えると思います。
作品の「ネタ」そのものではもちろん、外枠としての「組み立て方」そのものを脱臼することで笑わせるという、高度な技法を用いた作品で、その絵柄から皮相な先入観を持って見ていくと思わぬ竹箆返しを貰うのは確実だと感じました。


ネタに関してもそれぞれちゃんとギャグとしての起承転結が守られており、誰しもを笑わせる作りになっているのですが、3(4)話目「もしも・・・」のネタはもう少し転がしようがあるような気がしました。折角●勢というおいしいネタを使っているのに、やはりあそこはオカマネタでしょう(←凡庸な発想)!

弥栄堂」主催のインディーズアニメの星・つかはら氏によるサテライン講義の様子が本日限定で公開されました。

つかはら氏が文字通り捨て身で繰り出すギャグには、正直なところ本家「荻野RAVE」ほどの破壊力はないのですが(パロディなんだから当たり前)、フレームの使い方やアニメーション技法の解説はインチキ無しのいたって真面目なもので、ご本人の誠実な人柄が伺えますし、まずこれからインディーズアニメ制作を志すアマチュアは全員必見の作品と言って間違いないでしょう。というか、作者氏のこれほどの情熱を真正面から受け取れなければ嘘です。予備校の授業は高校の授業より真面目に聞くべきなんだよ!ぉーん


・・・・・・・それにしても、あれほどの傑作をモノにした人がここまで体を張る必要はどこに・・・・(笑)ハロルド作石のマンガじゃありませんが、「彼がこんなことをしてくれるのはこれが最後だぞ!有難く聞け!」と思わず言いたくもなります(笑)。

良質なアンチ・ミステリー作品と感じました。
そもそも、その物語の最終的な「面白さ」が凝縮された事象を、たかが数秒でネタバレできるような作品はその「ネタ」以外に存在価値が無いわけで、そこに至るロジックの緻密さ、あるいは文学性が、本当に良質なミステリーには必要なのだと思います(僕はミステリー読者ではありませんが)。有名な「犯人はヤス」にしろ、ポートピア連続殺人事件で一番面白いのは間違いなくどこにこうぞうの部屋があるのか分からない地下迷宮の探索なわけで(これネタバレですかそうですか)、当時小学生だった僕はあそこの攻略に数十時間を費やした訳ですがそんな事はどうでもよく、表層的で容易に消費可能な「ネタ」の為だけにでっち上げのストーリーを作り出す三流ミステリーやその流れを組む作品群(最も、作中で挙げられている作品はそうではないものの方が多かったですが)に対する痛烈な批判として本作は機能しうると思います。


「ネタ」の芸が中心だった「FLASH EXPO'05」のトリを飾るのがこの作品だと言うのはどこかアイロニーを感じなくもありませんが、主催者が本作の上映を許可した事から見てもこれは「折込済み」の事態だったのでしょう。実際に本作を見て本気で怒った人がいるかどうかは分かりませんけれども(笑)