今日のFlash・拡大版(「Combat-Heaven」「陽気なおばさん」「NEET」「Bunnykillシリーズ」「Rain」)

戦車破壊を目的としたバトルアクションゲームです。


体験版というだけあって細かい点には不満も幾つかあるのですが、卓越した画力に考えぬかれたゲームシステム、世界観設定やキャラクターの魅力など、全体を通して大変ハイレベルな技術力とセンスを誇る作品です。
こうしたゲームFlashには、(一人で製作する場合)画に力を入れすぎてプログラム部分が疎かになってしまったり、逆にプログラミングばかり凝って見た目の美しさを最初から捨象しているかのような作品が少なくないのですが、本作はビジュアル面を楽しみたいユーザーにもゲーム性を楽しみたいユーザーにも配慮の行き届いたバランス感覚を持っていて、流石はTANAKA U氏が師と仰ぐ人物の手によるものだけはある、プロ*1意識が漂うマーベラスな魅力を備えた一本です。


以下、「細かい不満」を箇条書きで。
・連射がきかないのは武器の性質次第で仕方がないとしても、一度入力した攻撃をキャンセルする機能がないのはインターフェースの不便さを強調してしまっているように思います。加えて処理落ちが起きたりすると何も出来ないままミサイル攻撃でボコボコにされてしまう事もしばしば・・・・。
・体験版とはいえボス無しでひたすらスコアを稼ぐクリアメソッドには少し物足りなさを感じました。完成版での凶悪なボスの登場を楽しみにしています。
・本編ではなく説明書なのですが、「エンターキー」の使途は武器チェンジであってエフェクトの切り替えではないのでは?掲載する際にプレイ方法の説明を間違えたのでしょうか。


先日開催されたイベント「FlashMaker Contest The4th」にて、独特の雰囲気を持ったFlashアニメ「LILLIA」を発表して注目された新人アニメ作者あかずきん696氏の新作です。


初期のぴろぴと氏を思わせるアングラ臭全開の怪しい世界が画面狭しと展開されていますが、雑誌「ガロ」にも投稿経験があるという作者氏にしてみれば、見た目におとなしい「LILLIA」の世界よりもむしろこっちが本領なのでしょう。
全編に鳴り響く呻き声のような邪悪な擬音と、背景からキャラクターが極端に浮き上がった切り絵の紙芝居のような体裁が、作品のシュールさに拍車をかけて余りありますし、ラストの無限ループを示唆するような不気味なカウントダウンもインパクト抜群です。ゆらりと舞い落ちる枯葉と漆黒の廊下には、否応なしに「死」を連想させる不吉な美しさが漂っています。
「一時の夢に浸らせてくれる作品」というよりは、悪夢の世界に見る物を捉えて離さない白昼夢的なホラー作品と言えるでしょう。


現在のVIP板の状況がよく分かる作品、と言いましょうか。


VIPで行われているような2ちゃんねる独特のコミュニケーションの形態を、2ちゃんねるFlashと結びつけて論じる向きもあるようなのですが、僕個人の考えとしては、VIPや2ちゃんねるのスレッドをネタにしたFlashの存在はネタそれ自体の傍系としてよりも、ネタを更に個人の解釈に基づいていじくった「二次創作」に近いものではないかと考えています。VIP系と言ってもただのギャグからシリアスな作品まで幅広いジャンルが存在するのは、VIPで行われていることに対するFlash作者の「解釈」の差がそこにあるからではないかと。


VIPの「ネタ」そのものの面白さを継承する形で作品化したもの(例:奈良の騒音おばさん)ならばその対象との距離はより「原作」に近い物になりはするでしょうが、それをしてFlashをVIPと同一視するのはこのような「本来のVIPとはかけ離れているが実にVIP的な」作品を理論上で捨象することになりはしないかという危惧もあります。本作にあるのはあくまでも通常のPV作品と変わらぬ音楽と映像のミックスが生む快楽であり、VIPはそれを表現する「モチーフ」として選ばれているに過ぎないのですから。


(それぞれ「WATCH THIS MOVIE!」をクリックして飛んでください)
北方はフィンランドFlashアニメーター(しかも高校生らしい)-Juuso-氏によるバイオレンスアクションFlashです。
どうやらかなり有名なシリーズらしいのですが、恥ずかしながら僕は今回が初見でした。


作中描写の残虐性は「Happy Tree Friends」、アクション描写の洗練度は「小小系列」をそれぞれ思い出させますが、極端なデフォルメが加えられて簡略化されたキャラクター造形は「GLOVE ON FIGHT」に端を発する日本の格闘ゲームFlashに共通項を感じなくもありません。どうにしろこれらアクションバイオレンスを主題としたFlash作品について特筆すべきは、作画の労力削減のためのキャラクターデザインの単純化(シンボル化)によりカンフー映画を基調とした肉弾戦のバトルを表現し得た点でしょう。
本作「Bunnykill」でもいかにもハリウッド然としたスリリングなカメラワークから、一転して平面的に解放されたカンフー映画的な固定カメラまで、様々な作品に影響を受けつつ貪欲に既存作の「いいとこどり」をしている様が伺えます。これが上記したような作品群と一切関係なく見えるフィンランドという土地から生まれたのは興味深い事実です。
にしても、既に死んでいる相手にさえ止めを刺すことを忘れないBunnyくんはヒドイというかプロというか(苦笑)。「3」の冒頭には英語で作品のストーリー解説らしきものが流れるのですが、誰か翻訳してくれないかな?


中国発のMTVFlashです。


黒板の上に色鉛筆で絵を書くのは容易な事ではありませんが、技法的なものを越えて丹念に書き込まれたそれは作者の「手のあと」として作品に彩りを与えます。Flash的なベクター描画に頼らず、自分の絵柄で作品を描ききった作者氏の「手のあと」はその努力の程を伺い知るに余りあります。


それでいてそんな制作上あっただろう苦心を微塵も感じさせない幻想的な世界の上では、森の中で歌が奏でられ、雨は大地を浄化し、魚は木々の中を踊り、作品は静かに幕を閉じます。
辛いことを忘れ去るかのように豊穣の世界に身を委ねる体験は、ファンタジーというにはあまりにも優しい大人のための絵本のようです。

*1:的な