倫理と社会規範について

  • 筆者氏の言わんとする事は非常によく分かるのだが、こういう問題をジェンダー理論、というか「世間のモノの見方」のような個人(の集合体である大衆=世間)の倫理意識の問題にしてしまうのは考え方として現実的で無いようにも思う。
  • いくら「失敗するな」「過ちを犯すな」「差別をするな」と教育したところで、人間は失敗をし、過ちを犯し、他人を差別する生物だ。これは高度な訓練と高潔な意思を持ってしか克服できず、実際の社会生活でこうした問題をクリア出来る人間はごくごく限られている(別に筆者氏も「世間の全ての人がそうあれ」と言いたいのではなかろうが)。これは僕が性悪説論者故の考えかも知れないが、いくら倫理が発達しても「これだから男は」*1「これだから女は」と差別をする人間が地上からいなくなるとは僕には思えない。
  • 故に、女性や少数者が、イコール「社会的弱者」として蔑まれない世を作る努力を(出来る限りシステマティックに)していく方が、「男女差別をするような奴はロクデナシだ!」といちいち指弾するよりも建設的だと思う。それなら別に「個人の倫理観の問題」などに踏み込まずとも、法改正や社会制度の整備等で対応可能だと思うし。
  • あと、何も「結構な特典」は男子だけに与えられているものではないと思うけど。女子にだって社会生活に有利な特典は沢山ついているでしょう。ただ、それが「男女同権」を唱える立場からするとロクなアドバンテージになってないのが問題なのかな。ジェンダー理論はよく分からないけれども。

*1:筆者氏は「男性であることの幸福のひとつは、なにか失敗をやらかした時に「だから男は……」といわれないことである」と述べられているが、例えば看護士やスタイリストのように、女性が多数を占める職業では普通に起こりうる事態なのではないかと個人的に思う(調べたわけじゃないから断言は出来ないけど)。そう考えると、この問題はジェンダー問題よりもマイノリティ問題として考える方が適切なのかも知れない