今日のFlash・後追い版(「BLOODSUCKER」「BLOODSUCKER2」「毎日が通常戦闘」「ある日の出来事」「My darling children」)

更新停滞中に取り上げられなかった作品の感想を少しづつ書いていきます・・・・。

GIFアニメーションの老舗「=TATSUBON'S HOUSE=」さん製作のハイクォリティGIFアニメーション。・・・・と知った風な解説をしてしまいましたが、恥ずかしながら僕はこれが初見でした。


GIFアニメーションは全てのシーンをコマアニメとして書き出さねばならない製作技法上、どのシーンに演出の力点を置くかが1枚絵をうまくアニメーションさせるためには非常に重要になってくるのですが、この「BLOODSUCKER」シリーズはそのあたりの匙加減が大変上手で、クライマックスのシーンはワンカットたりとも手を抜かず、反対にダレ場は殆ど1枚絵だけで成立させているシーンも散見されるのですが、それが欠点にならずむしろストーリーの山場谷場となって作品の緊張感を保っています。
また恐らくこれも制作労力の削減の為に選択したのだろう、モノクロの色調を利用した画面のコントラストのつけ方はハリウッド映画さながらで、白い空間に飛ぶ黒いマントのたなびく美しさ、闇に蠢く白い怪物の恐ろしさをそれぞれエンファサイズすると同時に、派手なアクションシーンでも画面を混乱させる事なく見た目に何が起こっているのか分かりやすいシャープな演出を支えています。画面で起きていることに観客を集中させるためにあえて字幕でなくシーン挿入によってセリフを表示する手法も、作者氏の自身の演出力に対する確たる自信の表れでしょう。
ともにGIFアニメの弱点と言われる部分を逆手にとって長所と化した典型的な例と言えそうです。


ストーリーはウェズリー・スナイプスの「ブレイド」というか「TRIGUN MAXIMUM」というか「HELLSING」な吸血鬼退治もので、オリジナリティこそあまり感じませんが、説明無しでもわかりやすい基本プロットに魅力的なキャラクター、取っ付きやすい少年漫画風のノリの良さは他メディアにそのまま移植しても広くスムースに受け入れられそうだと思いました(作者氏の本業は漫画描きさんなのだとか)。


蛇足ですが、劇中で「BLOODSUCKER」を「ブラッドシュッカー」と読んでいるのは誤読ではなくてワザとなのだそうです(BLOODSUCKER用語解説を参照)。

通常の四角いスクリーンを破棄し画面のスタイル自体をアナログ時計に見たてた野心的な作品です。一日の経過を示すために時計を暗示として用いる以外に、円形のスクリーンを生かしたアイディアがさらに二つ三つあればなお良かったと思いますが、VIP板の宣伝Flashのはずがやがて奇怪で支離滅裂なMGムービーと化して行く前作「ホライゾン」に見られるように基本的に演出への意識が非常に高い作者氏のようなので、こうした実験的表現手法を更に応用した大作を仕立て上げればとてつもないものが出来上がるかも知れないと思わせる期待値の高さがあります。


VIP板からは最近続々と新人のFlash作者氏が出てきているのですが、従来の2ちゃんねるFlashとはやや趣が違う、実験的で(反)デザイン重視の傾向は「お家柄」から来る共通の特徴なのでしょうか?まあメタ議論はとりあえず現段階ではさておいてもいいかも知れません。

僕の敬愛するFlash作者氏の一人、「つかいこなせていない」のnamida氏の新作です。


漫画風のセリフポップアップに主人公の心情を直截的に表現するモノローグは平凡に感じられますが、後半のシニカルな展開への布石だと考えれば納得がいきます。ベタで始まったものがシニカルにメタ化し、またベタに回帰して行く様は、どっかで聞いたことのある「シニシズムの果てのベタ化」とは明らかに違う知的な諧謔に満ちたそれであり、ラストシーンの主人公の複雑な感情とも相俟って、単層的なものに留まらない作中世界の奥深さを感じさせます。


また作者氏がもっとも力を入れていると思えるのが、主人公の見せるその表情の変化。ベーシックなベクター描画でも目口鼻の基本パーツの動作のみで正負に錯綜した心理状態を表現するテクニックには、既にベテランの域に達した作者氏の技芸の洗練が感じられました。

有名ゲーム「ARMORED CORE 3 SILENT LINE」の二次創作Flashアニメーションです(トップページはこちら)。


元ネタのゲームを全く知らない者にとってはストーリーラインは理解不能の点も多いのですが、恐らく見たもの全てを圧倒するだろうビジュアル面のハイレベルぶりは、設定の難解さをどうでもよいものとして捨象させるには十分なものです。CGによる描画であろう恐ろしく描き込まれた背景とその中を飛び交う背景と違和感のない作画力で描かれるキャラクター達・・・・・縦横無尽に動き回るロボットたちが、その複雑な立体デザインにもかかわらずカメラアングルの差異によるクォリティのばらつきが全く見られないのはもう「凄い」としか表現しようがないのですが、どうやら作者氏は元々CG関係のイラストレーターのようで、アニメーションにおける極めて高い立体把握能力も納得がいくといえるでしょうか(それを差し引いても凄いけど)。


本作の前編に当たるFlashアニメ「Leaving the nest」も全インディーズアニメファン必見のハイクォリティを誇っています。
従来のCGを用いた所謂「自主制作アニメ」界とも、ウェブ上のコミュニティなどを中心に展開されている「ウェブアニメ」界とも全く関係の無いところからこれほどのクォリティの作品が登場するのですから、いやーインディーズアニメって本当にいいものですね!
それはさておき、二次創作でこれだけのクォリティのものを出せる作者氏のオリジナルのロボットアニメーションに期待がかかりますが、制作の予定はあるのでしょうか?