今日のFlash・拡大版(「金魚」「ドクオクエスト 蒼天の救世主シリーズ」「Pride Of Wing」「マイケルクエスト」「My Grass」)
やっと「後追い」の文字を外す事が出来ました・・・・(´Д`;)
詩人北原白秋の同名の童謡をもとに、大正日本の風景を描いたFlashです。
のっぺりとしたベクター描画と文学性を重視した渋めの作品作りは、namida氏によるFlashアニメサイト「つかいこなせていない」の諸作品を彷彿とさせますが、センセーショナルな題材を扱いながら殆ど自己主張のしない抑えた演出と、おおよそ作中キャラクターに感情移入させることすら意図していない第三者視点の語り口は、BGMの不使用による無音の静けさとともに、少しづつ観客の神経を蝕むような不気味な緊張感を生み出しています。
グロテスクを趣味的に弄ぶでもなく、かといって憐憫とともに同情的に描くわけでもない冷徹な筆致からは、作中世界についての責任を放棄しない作者氏の誠実さが伺えます。独特のストイシズムに裏打ちされた気品ある一本。作者氏はこれがデビュー作という事で、今後どういった方向性の作品を打ち出してくるのか楽しみです。
本当は完結してから取り上げるつもりだったのですけれども、今一番面白いFlashシリーズだと思うのでここで紹介。
太めの素朴な描線で描かれた人間味あるキャラクター達と、一本筋の通った骨太のストーリーテリングからは、アマチュアの作品にありがちな創作上の迷いや不安を跳ね除けるような作者氏の自信が感じられます。ベタを丁寧に塗り重ねていくことで書き込まれた背景、過不足無く状況を説明する親切なセリフ回しには、作り手側の都合で観客を置いてけぼりにしない見る側へのサービス精神が溢れています。妙齢の美女も長髪の美男子も登場しない、良い意味で泥臭く色気の全く無い世界観からは、作者氏の「子供達に向けて作品を作る」という強い意思を感じました。
コンペティションに出品されるような芸術性の高い作品ばかりを追いかけていると忘れがちなことですけれども、日本のFlash、特に2ちゃんねるネタや既存の漫画やアニメの二次創作ネタを用いた「馬鹿Flash」を盛り上げてきたのは多くの子供達だと思います。「超厳選おもしろフラッシュ倉庫」や「フラケン」、「おもしろフラッシュ倉庫はっぴぺ」のような(・∀・)イイ・アクセスに匹敵するヒット数を誇るポータルサイトの存在は勿論のこと、はっぴぺに設置されているリンク集を見れば小中学生を中心とした孫ニュース的なFlash紹介・ポータルサイトがそれこそ星の数ほどあることが確認できます。「面白系」「2ちゃんねる系」「感動系」とカテゴリーが並ぶ掲載作品の傾向を見ても、こうしたサイトに日々観覧・参加する子供達が求めるのは、純粋に自分達をターゲットとして作成された、オタクっぽくなく、暗く小難しくなく、ストレートに笑えて面白い娯楽作品なのだろうと思いますし、またそうした児童向けの作品としての必須要素を本作「ドクオクエスト」は見事に満たしているように思います。
Flash作品の無断転載などの違法行為も平然と行われているこうした小中学生達のコミュニケーションを良く思わない向きもありますけれども、今現在、Flash作品の一部ジャンルがこうした層の人々に歓迎的に受け入れられている以上、「ドクオクエスト」のような正統派の少年向け作品がヒットするのは悪いことでは無いだろうと思います。文化の裾野はいつでも広げておくに越した事はありません。
追記:上記推論を確かめる為のリサーチを行ってみました。
「第二回紅白Flash合戦」にて、ヒット作「Twinkle」を生み出しながらも、都合でFlash制作から離れていたFlash作者、流星星野氏の復帰第一作です。
アニメーター加藤久仁生氏による「或る旅人の日記」シリーズなどに影響を受けたという幻想的な世界観はそのままに、柔らかく丸みのある描線によるポップな描画と、高度なデッサン力に裏打ちされた壮大なスケールを持った背景演出が融合し、第一級のアクション・ファンタジーの風格を作品に与えています。
コンプレックスを題材にしたストーリーテリングは青春の暗さ・青臭さを隠さない直球勝負のもので、癖のある作風とは一見ミスマッチにも思えましたが、文学的な捻りの利いたラストシーンを通過した後では、まるで優れた叙情詩を読んだ後のような爽やかな感動とともに、テーマの重さがずしりと胸に突き刺さりました。
中盤の強烈に突き落ちる雷のエフェクトに用いられた忙しない画面の点滅と、ラスト、柔らかな星の光に包まれた主人公の虚脱した表情が、コントラストとして上手く作用していると思いました。冷徹と激情の同居する、不安定ながら瑞々しい感情に溢れたジュブナイル的な一本です。
懐かしのファミコンソフトを巧妙にパロディナイズした作風で、一部ゲームファンから絶大な支持を受けているFlash作者、sikamako氏の新作です。
この異常にノリのいいバックミュージックは何なんだ*1とか選ぶ作品のチョイスに節操が無さ過ぎるとかマイケルが回ってるだけで笑えるとかスペランカーはどうやって土管まで到達したんだとかハッピーエンドじゃねえじゃんとかツッコミどころは山のようにあるのですけれども、何よりも素晴らしいのは、同作者氏による傑作「SEGA Fantasyシリーズ」と同じく、無作為に面白いネタを拾いあげるのではなく、一つ一つの作品にきちんと愛情を持って接しつつ、なおかつそれらを統合する確固たるドラマ性が作品に内在していることで、安易なコピペで既存作品を切り貼りしただけのネタFlashとはその制作動機から決定的な差があることを感じさせます。ゲームネタを壮大なロマンに昇華させた例としては、Alexander Leon「Mario Brothers」シリーズに匹敵する傑作と言えるでしょう。
マイケルの強烈なキャラクター(というか動き)を前面に押し出したアクション演出や、それぞれのパーツを統合再構築するFlashアニメとしての技術レベルの高さも申し分ない逸品で、これでマイケルがオープンソース化されたキャラだったら全世界に大手を振って配信出来ると思うのですけれども、それは少なくとも現実のマイケルにつきまとう様々なゴシップが解決するまでは実現しそうにないのが残念です!OH!
3DCGとFlashを組み合わせた独特の作風で知られるFlash作者OoOoO氏の久しぶりの新作です。
名作「紅白BATTLEモナ」をご存知の方にはお馴染みの二頭身のキャラクターが3D世界で自由自在に暴れ回る様には、一見非常にシンプルで単純ながら、アニメーションの最も根源的な、ただただ「ものを動かす」ことの面白さが詰まっています。ストーリーに仕掛けられた幾つものユーモラスなトリックがハイスピードで解き明かされていく快感は、数分の尺しかない短編アニメでしか実現不可能なものにも思え、作者氏が表面的な意味のそれではなしに「Flashアニメの面白さ」をよくよく把握している証左のようにも感じられました。
パッと見簡素すぎて味気ないようにも映るキャラクター達も、その仕草と動作の表情でもってきちんと観客の感情移入を促すようになっているのは、演出の基本ではありますけれども、解っていてもなかなか出来る事ではありません。技術もセンスも衰えぬままに、流星星野氏と並んで素晴らしいFlash作者氏がまた一人帰ってきてくれたことを今は素直に喜びたい気持ちです。