「武装錬金」8巻(和月伸宏)(ネタバレ注意!)

4月下旬の壮絶な打ち切りから2ヶ月以上の間隔を空けて発売された最終巻…の前の巻。
内容的なものを別としても、すっかり連載の熱が冷めた後にひっそりと刊行された本書には、個人的には淋しさ以外の何も感じない。その時が来たから別れようという決断に異議はないが、残念なことに変わりもない。さよなら武装錬金

  • 赤マルジャンプに掲載予定の最終話は巻頭カラー65ページとの噂だそうですよ皆さん*1和月先生の執筆ペースでは連載終了後も遊ぶヒマなしに描き続けたのでしょう。お疲れ様です。
  • 64話「EATER」うーん今読んでも恐ろしい強引ぶりですねいや戦部の負け方じゃなくてホムンクルス食べてパワーアップというシークエンスが。原始の戦士の先史なんて少しもフォローになってませんよ!いっそ自分を傷つけてホムの肉体を取り込むと逆にパワーアップするという設定にして、作戦成功のハズのパピヨンピンチ!→とっさの機転で脱出して勝利という流れにすれば良かったのに。逆襲方法はお約束のニアデスハピネス自爆で!
  • 65話「夜明けの墓場」根来登場のシーンはコマ割の妙と相俟って圧倒的な美しさ。画面を左上から右下にかけての斜めの線で分解してコマを割る技法(P27〜28)などは弟子の鈴木氏*2なんかもよくやる手法ではあるが、勿論和月先生の方が百倍は上手い。最後のブラボー登場も左右対称型の見開きでカッコイイのだが、やはりここでブラボーを投入したのは結果論からすると間違いだったような…
  • 66話「NO REGRET」宇宙へカッ飛ぶ少年ジャンプで二人だけドラゴンボールの世界に突入しているカズキとブラボーが素晴らしいね。演出も文句なし。にしても自分の能力の目分量を間違えて殺られる円山さんはアホ過ぎ。せめて一目で相手の身長を見抜く心眼メソッドくらい身につけてから出直して下さい。
  • 67話「影の抜け道」この話の剛太に燃えたor萌えたor喪得たor藻得た方にはこちらのサイトをオススメします!ただし「(剛太の)報われなさそうなところに共感する」という非モテ男子の方は見に行っちゃダメです!貴様らを救えるのはこっちです多分!
  • 68話「とりあえず―…」とりあえずつけたとしか思えない微妙すぎるタイトルはさておいて、この話の落ちというか謎解きについては掲載当初から2ちゃんねるとかでグチグチ文句を言ってた連中がいたように記憶しているのだが、もちろん何が言われていたか正確に把握しているわけではないので全てに反論するわけにはいかないのだけど主なところだけ1:最後の攻撃で地上に現れた根来は(よく絵を見りゃ分かるが)剛太の背中から現れているのであって地面から出てきているのではない。よって「地面から出ずに攻撃すりゃいいじゃん」などという批判は全く的を射てないというかお前ちゃんと話の流れを読めてないだろ。真・鶉隠れの策略とは相手が飛び道具の対処に感けている隙に相手の体内へ亜空間侵入する策だと考えれば自然。当然地上に姿を現さなければ攻撃は不可能だが、剛太のような反撃の仕方をしない限り相手が攻撃を回避する事はほぼ不可能。2:根来がとっとと地面に潜っていればモーターギアの攻撃を受けなかったというのはその通りだが、根来をすぐに逃亡させずにおいたのは「次の一手で〜」より始まる剛太の挑発混じりの会話であると考えてほぼ間違いなく、根来のマヌケを責めるよりもちゃんとダイアローグまで戦略に組み込んでいた剛太の知略を誉めるべき。3:抜け道の通行手形とは文字通り通行手形の事であり、亜空間に侵入する際その個人を確定する為の認証装置と考えるべきだろう。それならば「全体が血でベットリ覆われているか否か」はさほど重要なファクターにならず、むしろ侵入出来る物質の体積比にしてDNAが何%組み込まれているかが重要な手がかりになるハズだ。おそらく小数点で数%程度しかDNAは編みこまれていないだろうマフラーが侵入出来るのだからモーターギアも出来て当然。69話で剛太が手先だけ亜空間に突っ込めていたのも彼の手先とマフラーの体積比の問題(多分)。
  • 69話「セカンドラウンド」カズキの技にどうも小手先臭さを感じてしまうのが惜しい。いっそ真正面きってぶつかって敗れた方が絶望感もあると思うのだけど。
  • 70話「大事な存在を死守せんとする強い意思」サブタイNageeeeeeeee!/終始無敵だったブラボーが唯一持っていた弱さ(というか、裏返しに強さの根源なのだが)を自白した事でスムーズに攻守が逆転した格好。こういう書き方をすると差別っぽくてアレだが、久しぶりに男らしさを見せたカズキに女々しいブラボーがなびいたと考えれば分かりやすい。
  • 71話「EXCEL説明台詞多すぎ。カズキVSブラボーの最終決戦ぐらいはいっそノーネームで突っ切るぐらいの緊張感が欲しかったなあ。/「武装錬金」という作品の特異なところは一見ありがちな能力バトル×ヒーローモノの体裁をとりながら、根底には偏執的とも言える精神論の世界が横たわっているという事で、そのギャップが(消費娯楽たる少年漫画としての)本作を内部から引き裂いていたような感じが今になってしている。このことについては最終回を読んでからもっときちんとした事を書きたいのだけど、ただのオタク漫画としてカテゴライズさるべき作品でなかったことはこれと次の二話を取ってみても明らか。
  • 72話「GONE INTO FLAME」雑誌掲載当時の感想はこちら。詳細はライナーノートへのコメントで。
  • 73話「ここは任せて」雑誌掲載当時の感想はこちら。当初は打ち切りを全く想定外としていたことが伝わるコメントが我ながら痛々しい。/ヴィクターの顔が恐すぎるのは永きにわたる放置プレイの賜物だという指摘があります。多分間違ってない。
  • ライナーノート:65話、てっきり見開きの方が得意なものかと思ってました。66話、「マイルドなアブノーマル」の意味が分かりません。69話、その決断は正しかったと思います>魂のガチンコ。成功してるかは別としても。72話、最初に設定したコンセプトを製作段階でうまくいかないからと言って急遽変えてしまうというのは…。作品において優先さるべきは何においてもまず初期衝動だと思っている僕とは相容れない考えだけど、まあ和月先生なりの思惑があったんだろうなあと勝手に推測。再殺部隊編以後幼年読者を意識した(と思われる)展開や演出が増えてきた事も踏まえて論じると何か見えてくるかも。73話、結局カズキの豹変は伏線でも何でもなかったのかなー。最終回でのサプライズをそれでもしつこく期待します!いや別にカズキに恨みがあるわけではないのですけれども!

武装錬金 8 (ジャンプコミックス)

武装錬金 8 (ジャンプコミックス)

*1:確定的ソースはありません

*2:ミスフル」の人ね