今日のFlash・拡大版(「feps」「うねりの塔」「声にならない叫びとなって」「True Color」)

更新が滞ってしまい大変申し訳ありませんでした。

今年2月に開催されたオフラインFlashイベント「FLASH EXPO」にて公開された作品です。


作者2501氏の他の作品と同じく、一見停滞した挙動の中にも一定方向への指向性が感じられるシンボル操作が美しいです。12秒の地点までの劇的な演出で作り出したムーブメントを殺す事なく、リズミカルなステージングで映像を最後まで引っ張っていきます。


30秒という上映時間の短さもあって、発表当初はFlash製作者向けの技術解説の意味あいが強かったようですけれども(発表当時の題名は「低fpsのススメ」だそうです)、普通の環境映像としても十分機能できる完成度の高さは流石といったところでしょう。ウェブデザイン用のサイトスプラッシュとして用いても違和感のないノーブルな逸品です。

ラクターを操作して竜巻と戦う(!)3Dアクションゲームです。


熱血ジジイが竜巻と戦うというアイディアのオリジナリティもさることながら、ウェブゲームならではのシンプルさを生かした妙な装飾のない硬派なゲーム性がプレイヤーを虜にさせます。攻撃弾数やトラクターのエンジンの性能などを細かく調整できる絶妙な能力制限の仕方、巨大な竜巻にギリギリまで近づいて攻撃を加えなければいけないことによる緊張感の持続、変にマンガマンガしたキャラクターを出さず終始作業着姿のオヤジしか出て来ない色気の全くないシリアスさ加減は、プロのゲームデザイナーを目指しているという作者氏の真剣な気持ちの表れにも思え、大の大人が本気でプレイするに値するハイブラウな魅力を感じました。


ゲームシステム全体のレベルの高さに比すれば些細な事なのですけれども、幾つかプレイしていて気になった事を。
・初期に選べるエンジンの数が少なすぎるように感じました。いくら頑張れば隠しエンジンが出てくる(らしい)と言っても、あの程度の性能では頑張れる気がしません…。
・障害物に止められると身動きが取れないのは非常にストレスが溜まるので、何らかの回避コマンドを設定してくれるとよりインターフェース的に良かったかも知れません。12面の発電所が難しすぎる…。
・木一本吹き飛ばされても「被害」に換算されてしまうのはちょっと…パーフェクトの一歩手前で失敗するケースが多くて、被害率をゼロにするのに一苦労でした。

2ちゃんねるFlash・動画板出身のFlash作者、「たとえばVIP」さんの新作です。


冒頭760フレーム程までは普通のMGのような体裁をとりながら、一挙にその趣を変えてテーマ不明の「ごった煮」イメージムービーの様相を呈する独創的な展開が目を惹きますが、どのシーンにしろ繰り広げられているのはどこかで見たような記号の集積とそれに付随する演出であり、一見それほどの見所があるようには思えません。


しかしながら、こうした表面上「ベタ」な世界観に対して自覚的な作者氏は、意図的にそれぞれの記号の「意味」を消失させ、それぞれが表象するテーマそれ自体を無効化しています。「矢印」をシンボルとして用いれば後の展開でそれを否定し、印象的な言葉や流行語を演出に組み込んでもそれを深く描いて見せる事はせず、突然アニメーションを始めたかと思えば唐突に作者氏本人の自己紹介を流したり、全く単一的な「ストーリー」の流れを持たないガジェットの無作為な羅列は、作中世界が滑稽なナンセンスの海に飲み込まれていく様を受け手に実感させ、感情を鼓舞させる事を目的としたプロパガンダ的な作品とは趣を意にするシニカルな魅力を醸し出しています。


何よりも、2ちゃんねるの下らない「ネタ」が「(Flashの)ネタ」以上のポジションを与えられる事なく、高度な技術を注ぎ込まれて表現されることの虚無感こそ作者氏の描きたかったものだったのかもしれません。

フランスの映像作家による3DCGアニメーションです。


高尚な玩具のようなキャラクターの魅力と、ハイエンドなビジュアルで描かれるファンタジーSF的でユニークな世界観もさることながら、ストーリーテーマに沿った演出の比喩的形容が見事です。最初の機械的で画一的な動作を強調した「日常」のシーンが、世界に「色」が溢れ出す一大事件をきっかけとして、各々が自由に動き回る生命感溢れるシーンへと移行していく様は、変な解説の必要も無しに、受け手の感覚に直接的に作中テーマを訴えており、言語の違いなど何の問題にもなりません。


「お定まりの退屈な日常を破壊して自由を手に入れよう」というテーマそのものには、前時代的というかあまり現代の状況に則していないものを感じなくもありませんが、技術に溺れずストーリーを捨象しない姿勢と、大衆への受容をを意識したポップなアプローチの見事さは認められて然るべきでしょう。内部に閉じこもりがちな日本製アニメーションとは性質の違う、パブリックな雰囲気がさわやかな作品です。