「FlashMaker Contest The4th」感想・その1(「オープンソロジー(Openthology)」「これはいいインターネットですか?」「FMCオープニング」「「恐怖が愛に変わる瞬間」CM」「NO*ZO*MI」「九字PV」「FLASH絵本「Thank you」」「少年時代にやったゲームの続編のCM」)(ネタバレ注意!)

5月5日に開催された同イベントの感想です。作品数が膨大なため、数回に分けてエントリーを書く予定です。

雨後の都会のような爽やかな色使いに、「テーマ:幼少の思い出」が示す通りのノスタルジックなBGMと演出が被さったポエジーな一作です。
イベントの「オープニング」用に作られた作品としては随分控えめな印象があり、作品自体も短めですが、オープンで自由度の高いイベントの性質を考えればこのような「始まり」が最も相応しいといえるかも知れません。
写真素材の巧みな使い方に舌を巻きました。

鮮やかなブルーの背景色にいきなり補色である「赤」を対置させる大胆不敵なオープニングから始まり、やがて色彩が喪われてシーンが「過去」に移行し、また厳格な色彩の対比に連なる「未来」へ展開していく過程が刺激的に描かれています。ビビッドな補色・対比色を何の衒いもなく使いこなす作者氏の迷いの無さからは、自信の色彩感覚に対する自負心すら伝わってきます。テクニックとパワーで強引に押し切る自力の強さを持った作品です。


クライマックスまではこれといったミスも無く進むのですが、最後の最後で解説的なモノローグを入れてしまったのは作品のトータルバランスを考えるとやや失敗だったような気もします。何故かラスト近辺はレタリングも荒れているのですが、時間が足りなかったのでしょうか?

↑二つ上の作品とバッティングする形になってしまったオープニング作品ですが、こちらの方が平明として解説的な分、第三者にイベントの趣旨を理解してもらうには適切と言えるかも知れません。
本編はスプラッシュムービー的な短編ながらASK氏の楽曲をBGMとして採用した挑戦的な一作で、イラストを用いながらイベントの概要を分かりやすく綴ったものになっています。しぃの手に握られた光の処理が情感漂うメロディと共に印象に残りました。
ただ、「Are You Happy?」を使うなら楽曲はイントロで止めてしまった方がよかったような気もしますが(何故か曲展開部の触りだけが残っていたので)。

最近の映画のCMでありがちな「街頭インタビュー」の典型をメタ化した上でパロディし、皮肉混じりのシニカルなギャグ作品に仕立て上げています。映画自体の内容も「指輪」まで持ち出しておいて何故ここまで面白く無さそうなのかというしょうもなさで(笑)、作品のテーマに説得力を付与しています。流石兄弟を登場させる必要性としては、彼らが第三者的視点に立って会話をしている=対象に向けたメタ言及を行っていることから、鑑賞者の感情移入の対象としてわざわざ設置されたと考えられ、作者氏の鑑賞者に対するサービス精神が伺えます。


ありがちな映画CMによる被害の報告についてはこちらをどうぞ。

ドロドロした情念劇になりがちな男女の恋物語を、思春期にありがちな主人公の「強がり」を中核に添えて、悲しみさえ口笛に乗せて歌声とともに笑い飛ばすような乾いたユーモアで清真に描ききった一作です。
エモーショナルな男性ボーカルの生み出すどことなく春の陽気を感じさせる気だるい雰囲気と、登場人物の感情を微に入り細に入り描き出す少女漫画風のタッチの相性の良さも抜群で、皮肉でなく1日で作られたというのが信じられない完成度を誇る作品に仕上がっています。
気の落ち込んだときにさらっと見て元気を貰いたい佳品です。女性にオススメ。

三味線風のBGMに乗せて明朝体の記号と化した文字列が迫り来るシンプルなPVです。基本的には同じパターンの繰り返しで構成されているため、一見飽き易く見えてしまいますが、何度も何度も強調的に反復描写を繰り返すことで、画面を凝視しているうちにいつのまにか文字がどんどんこちらに迫ってきているような錯覚にすら襲われる(本当に襲われました(笑))ドラッギーな作品になっています。気持ちよくトリップしたい貴方は全画面表示×音量最大の併せ技でどうぞ。


恐らくは作者氏自らを撮影したのでしょう、「印」を組んでいる写真の「手」も、作中世界との微妙な違和感と相俟って、馬鹿馬鹿しいようなユーモラスなような独自の雰囲気を醸成するのに成功していました(笑)。


参考:九字 - Wikipedia

「アニメーションにできなくて残念だった」とのコメントがありましたが、たとえアニメーションはなくとも、作品をぐいぐい引っ張っていく「言葉」の力が本作にはあります。
このようなモノローグ主体のサウンドノベル(絵本)では、ちょっとした言葉づかいの瑕疵が作品全体の雰囲気を台無しにする致命傷になりかねないのですが、本作の作者氏は主観文体の基本を抑えた堅実かつ鮮やかな手並みでラストシーンまで一気に駆け抜けます。
特に、冒頭の「天気のいい日曜日/今日は僕の誕生日」の一見脈絡のない(が裏面で確実に繋がっている)倒置法文体と、中盤の「少しワクワクする/〜/青いくるみも吹き飛ばせ!」の感情を直接文章に変換したような文体が強く印象に残りました。
今後チャレンジするつもりだと言うアニメーション作品も楽しみですが、「文章系」方面にも才能を発揮できそうな方のように思いました。

言及されているゲームに関しては全く既知の情報が無かったのですが、「子供の頃の体験を再現する」というテーマといい、「場違いなことは分かっている」と言いつつもこれだけ気合の入った作品を大勢の観客が集まるだろうイベントで公表する豪気といい、いつかの大作Flashに通じる作者氏の対象への熱い思い入れを感じる作品になっていました。
そういえば「SAGA」を一字入れ替えれば「SEG・・」あ、いやなんでもありません。


ところで、あの犬はどこかのマスコットキャラに酷似しているような気がするのですが、ひょっとしてハンター=はてなダイアラーなのでしょうか。正義の戦士と見せかけて、その実単なるはてな中華思想の信望者だったりするのでしょうか(絶対違う)。



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