「朝目新聞」の作品規制ガイドラインを設置すべきかについての問題

(間違って読みに来てしまった人へ:本エントリーは朝目新聞議論板に対するレスポンスとして掲載されたものです)


半分書いたまま僕の怠惰さのために放置していた「えら〜氏の325番イラストについての問題」ですが、もう半分の部分、つまり「問題2.既存作品のパロディ・ギャグなどを中心とする「朝目新聞」の掲示板にそのような内容の絵を投稿するという行為を許容すべきか?」について、今回の「通りすがりの忍」氏による作品「どらイモン」についての議論に通じる問題だと思うので、タイトルに掲げた「「朝目新聞」の作品規制ガイドラインを設置すべきかについての問題」として少し考察を行ってみることにします。


まず、従来の「朝目新聞」の掲示板が慣習法による制御の元に成り立っていたという事実については異論はないかと思われます。
「慣習法」とは即ち従来の習慣の積み重ねによって生まれた不文法の典型的なものであり、特に外部からの強制的な成文法=ガイドラインが不在でも人々の間で護られる法の事です。えら〜氏の議論の時に連呼された「空気読め!」という意見表明を言い換えとして用いても良いかと思われます。

  • ネタと自由

とはいえ、「朝目新聞」の掲示板にガイドラインが全く無いという事はありませんので、「アサメグラフ投稿用BBS エントランス」に掲示されている「ガイドライン」を以下に引用します。

掲示板は、円滑な運営と、描き手の意欲が保たれることを最優先とします。
そのため、アドバイスは受け入れますが、単なる煽り、叩き目的のコメントには対処をします。
批判に傾いた意見を言う場合には、極力改善に繋がる対案を入れて下さい。

また、板の管理に関わるような発言は荒れる元のため避けて頂けますようお願い致します。



●練習板−ネタ絵・マンガ
 ネタ絵やマンガの投稿用の板です。
 ネタ絵とは、ネタを見せる事を目的とした絵を指します。

●練習板−イラスト
 イラスト用の板です。
 擬人化系の1枚絵等もこちらへの投稿をお願いします。

 絵板初心者の方の投稿や、中級者以上の方が軽めの投稿をするための板です。絵板に慣れるまではこちらをどうぞ。

 ※絵を描く事自体が初心者という方は、このページ下部のリンクよりある程度基礎を学んでから参加下さい。
 ※途中保存はできません。

※水準から差がありすぎる作品、 露骨に手抜きな作品、 作品の体をなしていない単なる習作等は削除する可能性が高いです。
  また、イラスト板はネタ絵板と比べると画力による削除基準が上がります。了解の上参加ください。



●練習試合板(新)
 本番板参加者の軽い投稿用、またはある程度描き慣れた方がギャラリー掲載を目標に投稿するための板です。
 こちらへの投稿を見て、上級板での投稿を推薦させて頂く事も多いです。
 練習板と違い投稿内容の区分はなく、自分のPC等で作成した画像のアップロードも可能です。

 ※削除の基準は練習板より数段上になります。




●本番板(新)
 投稿作品のギャラリー掲載を前提とした、上級者専用の板です。
 練習板と違い投稿内容の区分はなく、自分のPC等で作成した画像のアップロードも可能です。

 ※参加は許可制です。初めて投稿される時は、練習板または練習試合板への投稿をお願い致します。




その他の注意
・謙遜か、本気で良くないと思ったまま投稿したのか区別が付きにくい場合があるため、
自分で自分の作品を卑下したコメントをつけるのは避けて下さい。

・エロスな描写は少年漫画誌レベルまで。 エロいうもんがエロというタイプの作品は自己判断で。

・グロ・残酷表現は特に制限しませんが、ある程度は常識の範囲で。

・アダルトゲームネタは(善し悪しでなく年齢制限でわからない人も多いため)基本避けて下さい。

マルチポスト(複数の絵板への同作品の投稿)について

ここに対してのマルチポスト投稿は特に問題なしとしますが、
他の投稿先へのそれは自己判断で良識有る配慮を願います。


掲載作品の取り扱いについて
ギャラリー掲載作品の著作権は、当然ですが、作者の方にあると考えています。
(二次著作の作品については、かなり微妙な話ではありますが・・・)
ギャラリーへの掲載を望まない場合は、その旨コメント欄にご記入下さい。
掲載済みの作品を外したい場合もご連絡頂ければすぐに対処いたします。

朝目新聞と言えばネタ絵」という常識=慣習法がありますが、ガイドラインには特に「ネタ絵でなければならない」という条項が無いのに驚かされます。
読めば分かりますが、極端なエログロの表現を除いては殆ど規制らしい規制もなく、絵のクォリティに関してもせいぜい「水準から差がありすぎる作品、 露骨に手抜きな作品、 作品の体をなしていない単なる習作」という曖昧な判断基準が設けられているにすぎません。中でも「水準から差がありすぎる作品」という表現は象徴的で、「朝目新聞」がまさに「掲載されている作品やコメントの雰囲気」と行った要素にその法的判断基準を依拠していることの証左と言っても良いと思います。「水準」とは即ち「掲載されている作品のクォリティの平均値」の意でしょうから*1


このような極めて緩いガイドラインの成立は、恐らくは「朝目新聞」が元々個人規模のお絵描き掲示板から出発したこと、それが二次創作やパロディなどの現実の法律に照らせば「違法」と見なされてもおかしくない作品を掲載していたことに由来するのだと思われます。ガイドラインが緩ければ作者が選択しうる「ネタ」の範囲が広がりますし、表現そのものに対する自由の確保にも繋がりますから。


しかし、こうした「慣習法」で成り立った場が、規模の拡大とともに変質し、崩壊しかかっているのが現在の「朝目新聞」なのではないかと思います。

  • 訪問者の増加に伴う「空気の読めない」人の出現

当然の話ですが、「慣習法」がその場にいる人々が積み重ねてきた習慣によって成り立っているものである以上、他の場から尋ねてきた「よそ者」には慣習法のなんたるかをすぐに知る事は容易ではありません。
積み上げてきた「慣習」が複雑であればあるほど、よそ者にそれを理解するのは困難になり、結果として「元々の住人」と「よそ者」との間に軋轢を生み、最終的にはそれが論争に発展する場合も少なくありません。そのような事態が局地的に頻発しているのが現在の「朝目新聞」の状況なのではないかと思います。


この問題の原因は二つほど考えられます。一つは上記したように「朝目新聞」があくまでも不文法によるガイドラインの生成に拘ったために、外部から来訪した「よそ者」にはその「お約束」を理解するのが難しいという性質を持っていたこと。もう一つは単純に「よそ者」=外部からの来訪者が増加し過ぎた事です。
朝目新聞の叩き出した1500万ヒット(そろそろ2000万の大台に突入しそうですが)という来訪者数はどう考えても上記したような「慣習法」を規範としたお絵描きサイトとしては常軌を逸しているとしか言いようがなく、ただでさえ「よそ者」は理解する事が難しい「慣習法」では次々に流入する来訪者を制御仕切れなくなっているというのが現在の「朝目新聞」の実態のように思えます。またこれだけの規模のサイトの管理権限を持っているのがマスターである机器猫氏一人というのも、サイトの規模を考慮すれば無茶であるとしか言いようがなく、頻発する問題に対処しつつ更新を行うのは、机器猫氏への過剰な負担がかかることを考えても、いかにも望ましくないと言わざるを得ません。

  • 自由を護るか、秩序を手に入れるか

さて、上記したような問題に具体的な解決を与えるには、どのような手段を執るべきなのでしょうか。
僕は3つほどの解答が選択できると思います。


1番目としては、従来の慣習法による制御を捨てて成文法=ガイドラインを導入するという手段が考えられます。
「同性愛を示唆する表現を禁止」「死者への侮辱と捉えられかねないような表現の禁止」「コメント欄での議論の禁止」と、とりあえずこの三項だけでもガイドラインとしてエントランスの条文に盛り込めば、先のえら〜氏の問題や今回の通りすがりの忍氏の問題は一挙に解決できますし、またコメント欄の紛糾による議論の頻発を防止することもできます。
ただし、当然ながらこれらは「朝目新聞」の表現全般について「規制」を設ける事ですから、今後たとえギャグとしての「ネタ」であっても、これらの表現は書き手の意思によって「自粛」することが必要になってくるといえるでしょう。今後「ハウスダスト・クルセイダーズ」のような作品が生まれることは望むべくもないですし、ホモネタとしての「ヤマジュンネタ」等も全面的に禁止する必要があるかも知れません。


2番目としては、管理権限を机器猫氏以外の信頼のおける個人にまで広げるという手段が考えられます。
要は今の2ちゃんねるが行っている「削除人」制度のようなもので、机器猫氏の裁量の元有志のボランティアを募り、板の管理を複数で行うという手段です。これを導入すれば机器猫氏個人に過剰な負担がかかるような事態は回避できると思われますが、ボランティアをどのようにして選ぶのかという基準を置く事の難しさ、また管理者の性格の違いによってその場の裁量が変わって来てしまう可能性についてのジレンマから、実現はやや困難であると言えるかも知れません。


3番目としては、従来の「慣習法」を強化するという手段が考えられます。
例えば、2ちゃんねるの例で言うならば、特殊な話題を扱うスレッドに書き込む新参の来客は「半年ROMれ」などという忠告を受けるという事がありますが、半年とは言わないまでも数ヶ月はROM(単なる観覧)に徹することを義務付けることで、「空気を読む」ことのできる人を増やし、場の雰囲気=慣習法を理解し、絵の投稿やコメントの投稿の際にもそれを遵守してもらうという手段は考えられます。
ただし、1番目のアイディアが「絵の投稿者」について護らねばならない義務を設けるのに対し、これは「ただの観覧者」について護らなければならない義務を設けると言う事なので、果たして全ての観覧者についてそれが遵守されるかの法的強度については議論の余地があるアイディアであるとも言えます。また、観覧者側に負担を掛ける事で、かえって場の雰囲気をギスギスさせてしまい、従来の慣習法を崩壊させてしまう危険性を考慮することを実施の際には忘れてはいけないでしょう。

  • 生かすも殺すもアナタ次第

以上、早足で書きましたが、書き終えて思った事として言えば、現在の「朝目新聞」において、「朝目新聞」というサイトに対する生殺与奪の権利は、管理者である机器猫氏よりも、膨大に増殖した観覧者の側に委ねられていると言う事があります。求められる表現と秩序の鬩ぎ合いを理解し、管理に協力していく事が、我々観覧者に課せられた義務のように思えてなりません。


「表現は規制してもいいから秩序を作れ」という意見は、現在の朝目新聞には反しますが、意見者の態度としては一貫しているように思えます。「表現を規制するな、秩序はいらない」という意見も同様でしょう。しかし、「表現を規制しつつ秩序は作らなくて宜しい」、「表現は規制しないで秩序を作れ」という意見は、論理として明らかにダブルスタンダードな子供のワガママに過ぎないように思えます。
自分が気に入らないものを「気に入らない!」と声高に主張するのもご結構ですが、その「主張」が何をもたらすのかについて考える矜持が無ければそれはただの「暴言」にすぎませんし、自らの名誉を背負って発言している人間に対して匿名の安全地帯からモノを言うのは、仮想空間であるインターネットの「常識」を考慮しても極めて卑劣な小心者の戦い方に過ぎないように感じます。


僕は今後も「朝目新聞」に通い続けると思いますし、またいちいちそこで行われる(多くは不毛な)議論に付き合う気もありませんが、コメント欄が荒れ続けるようであれば管理者氏はコメント欄を閉鎖するでしょうし議論が火種になるようであれば管理者氏は議論を禁止するでしょうし、結果としてサイトが荒らしが幅を利かせる憎悪渦巻く場所に変貌してしまうのなら、管理者氏はサイトを閉鎖するでしょう。それらは全て、あまりにも増殖し力を持ちすぎた観覧者側の意思を反映したものとなるでしょうし、全てが終わった後で「イヤ俺が悪かった、考え直してくれよ、なぁ?」と既に朽ち果てた荒野と化した「その場」に尋ねてみたとして、それは全く無意味な事に過ぎないと思います。


最後に、「朝目新聞」の一層の発展と健全な運営の履行を願って本稿を閉めたいと思います。
つーか机器猫さんマジで頑張ってください。大変でしょうけど。

(上記内容について異論・反論・ご意見・苦情等ございましたら是非ともコメント欄にお書き込みください)

*1:そしてこれもまた主観的に判断されうる基準にすぎません