「エイリアン2」(ネタバレ注意!) 

製作 ゲイル・アン・ハード(「ターミネーター」「トレマーズ」)
監督/脚本 ジェームズ・キャメロン(「ターミネーター」「タイタニック」)
撮影 エイドリアン・ビドル(「テルマ&ルイーズ」「ハムナプトラ」)
音楽 ジェームズ・ホーナー(「アポロ13」「タイタニック」)
出演 シガニー・ウィーバー(「エイリアン」「ギャラクシー・クエスト」)/キャリー・ヘンマイケル・ビーン(「ターミネーター」「ザ・ロック」)/ランス・ヘンリクセン(「ターミネーター」「クイック&デッド」)


先日、TVで「ターミネーター」(3番目の)がやっていたのを見て懐かしくなり、DVDで再見。
ジェームズ・キャメロンは「極小」と「極大」を繋ぐ演出が上手い。数名の構成員から成る「家族」が人類全体の未来を決める鍵を握っていたのが「ターミネーター」シリーズなら、この「エイリアン2」では惑星LV426に向かう海兵隊の少数精鋭達が、放っておいては人類を絶滅させかねない凶悪なエイリアン軍団を退治に行く。
先に来ていた開拓民が全滅するほどの事態にあの程度の規模の軍隊しか派遣しないのは冷静に考えればおかしいし、また前作で無敵だったエイリアンが頭数の多さに反比例して弱体化しすぎなのだが、物語を容易に掌握できる箱庭的なフィールド(=惑星LV426=「極小」)で展開させながら、なおかつ無制限に増え続けるエイリアンの恐怖(=極大)を表現しようと思ったら、ほぼああする他に手段は無かったのだと思う(それでもなおリドリー・スコット版と比較したエイリアン自体の恐怖感の減少は批判されているが・・・)。
こういう話は下手に主人公を無敵の超人にすると安易な英雄譚になってしまうのだが、本作でのキャメロンは意図的に感情移入しにくいヒス女とボンクラ兵士を主人公して話を展開し、かつ彼らがエイリアンによって追い詰められ、それぞれに人間的な一面(特にシガニー・ウィーバーの役どころにおいては、キャメロンが自作で通底してテーマにしている「母性」の演出が冴え渡る)を見せ始めたところから逆転劇を展開するので、主人公を「(観客にとって)身近な存在」としてヒーロー化せず、尚且つ勝利のカタルシスを観客に存分に味わわせるという離れ業を展開することに成功している。
わずか6体の着ぐるみを使いまわして撮影されたエイリアンのリアルな所作や、スリラー映画のお手本のような粘着質のカメラワーク、主人公達が目的に着いていきなりクロサワ風の雨を降らせる演出センス、遠くで鳴った音が本当に遠くから聞こえてくる音響効果の見事さ、クライマックスのバカ母vsバカ母の爆笑面白大決戦など、特撮/SFX技術ばかりが評価されている作品だが、上記したような脚本の上手さ、前作を踏襲しない設定の妙も、前者と同列に語られてもいいんじゃないかと思う。