今日のFlash(「ギコヴァリアリビジョンオープニング」「ペロチャン、お勉強をする」「Landslide」)

num1000 512kb cache mix」を思わせる鮮やかなブルーが美しいオープニングから、シンプルなサークル記号から作者氏自作のイラストまでありとあらゆるシンボルが飛び交うレイヴなPVの世界へと華やかに画面が展開していきます。
こうしたデザイン重視・スピード感重視のPVでは具象シンボルや解説的なセリフの挿入は作品のドライブ感を殺ぎ落としてしまう可能性のあるものとして「禁じ手」として封じられてしまう場合も多いのですが、この作品ではまるで芸術家の書いた数学の方程式のような、支離滅裂ながら奇妙な説得力を持った画面の「纏まりの良さ」を持ってそれぞれの要素を強引に纏めることに成功しているように思えました。
ゴールデンウィークに開催の「Flash Game Festival'05」に出品予定だと言う本編も楽しみに待っています。

一見ほのぼのとした絵本風のタッチの中にも、さりげなく不穏な笑いが滲んだシニカルな作品です。勉強をする「いぬ」に憧れて本を読み出す「ペロちゃん」が手にとるのがニーチェの「善悪の彼岸という時点で分かる人には爆笑ですが、最初取り出したとき本の向きがさかさまだったり、「漢字が難しくてわからない」といちいちいぬに内容を解説してもらおうとするペロちゃんの姿が微笑ましかったり・・・・。


登場人物のある意味での「愚かさ」を誠実に描きつつ、大上段から見下すような傲慢な視点を避けて、人間が得るべき「知性」のありかたをやんわりと描いた作品のように思えたのですが・・・深読みしすぎかな?
全体に滲み出る作者氏の優しさと、作中世界への暖かな眼差しに好感の持てる作品でした。

「NAILS」等で有名な海外のFlashアニメーションサイト・hoogerbrugge.comの新作です。リンク先の右柱にある「Video」から「Nachtpodium 19: Han Hoogerbrugge」をクリックし、Windows MediaかRealMediaのいずれかを選択してご鑑賞ください。


この作者氏の作品を見ていていつも感じるのは、奇妙で不条理な世界にありながらもどこか乾いたユーモアによる爽やかな鑑賞後感です。不条理に溢れた「ヘンテコな」世界を、「ヘンテコ」なものそれ自体として受け止め、消化/昇華する知性と器の大きさが作者氏にはあります。


「不条理」をテーマとした作品を描く作家は世界中に数多くいますが、その大半が「世界が不条理であること」を嫌悪しそれを否定しようとして現実を捻じ曲げてしまうタイプの作家なのに対し、この作者氏は不条理を不条理のままで何の「歪さ」もないままに観客の前に提示し、「別に変なままでもいいじゃないか、世界は本当は変なものなんだ」とやさしく語っているように見えます。
人が空を飛ぼうが、ピストルに撃たれて死のうが、ハンマーで地面に埋め込まれようが、今まで地球上で起こった全ての事象を受け止めてきたはずの「世界」にとっては大したことでは無いし、たとえその結果誰かが死ぬことになっても容赦なく「世界」は継続していきます。自己の問題を世界全てに敷衍するかのような自意識過剰な傲慢さは微塵もなく、生も死もあるがままに受け入れてこの「世界」を生きぬいていく、大人の覚悟がこの作品からは感じられます。


ピストルに撃たれて一度は死んでしまった主人公は、その後幽霊となって立ち上がり(!)、なおも先に進もうとします。途端、今まで主人公に対し冷酷だった「他の人々」(と言ってもお約束で顔は全員一緒なのですが(笑))が一列に並んで順番に主人公に頭を下げていきます。
この世はもともと「不条理」なもので、どんなに素晴らしい人でも明日、ふとした事で命を落としてしまうとも限りません。しかし、だからこそ、「不条理」を「不条理」のまま受け入れて、洒落た帽子とスーツを身につけて堂々と歩く主人公の姿は、バカFlashの主人公だと言う事を忘れてしまうぐらいカッコイイのです。