週刊少年ジャンプ2005年度20号感想

100年の夢。


そもそもの悲劇の元凶は言うまでもなく黒い核金(Ⅰ)なのだが、黒い核金の研究を押し進め、自らの夫に移植することを選択したのはアレキサンドリア自身だった。娘は生まれてしまった業故に自らの身を化け物に墜とし、明くる日も明くる日も、ただ一縷の望みに賭けて研究を続けた。黒い核金(Ⅲ)がとある偶然からカズキの胸に収まるまでは。


一旦狂ってしまった現実の歯車を元の姿に戻すのは容易ではない。ただ一つの目的の為に躊躇いなく現実を捻じ曲げていくとき、その度合いが進めば進むほど、現実は現実ではない場所、夢の領域に近づいてゆく。
ヴィクターが現に在らざるべき化け物へと変貌した後、やはり妻と娘も人とは呼べぬ姿に変化し、ヴィクターを助けるために作った核金の片方がもう一人のヴィクター=カズキを作りだし、さらにさらに錬金術の業を深いものにしていく。そもそもの「夢」―「錬金術の禍根を絶つ」という夢を捨て去ることから始めねば、いつまで経っても世界を「現実」に引き戻す事は出来ない。100年の歳月の中でヴィクター一家は理解したはずだ、自分が夢見ている「現実」が、自らの存在からどこまでも遠ざかってしまったと言う事を。あの幸福が、あの世界が最早取り戻せないものであることを。


アレキサンドリアは自らの行動に決着を着けるために、カズキに白い核金を渡した。心優しいカズキはそれでも、どうにかして自らの手で彼らを救えないものかと逡巡するだろう。だが、彼に時間は残されておらず、答えは既に出ているのだ。

・・・・・・お、おおおおおおお!?ちゃんと伏線が回収されてる!?


いや、別に悪口じゃあないんですけど、僕は久保先生って典型的な車田正美タイプの作家だと思っていたので、丁寧に伏線を回収した事実そのものに驚愕しましたよ。ていうかあの虚とかちゃんと裏設定があったんだ!君達の行動だって僕の計算の内だったのさうわー悪役っぽいセリフだヨン様みたいなツラしやがってすっかり悪の大ボスじゃねえか藍染どれどれどんな計略で一護の突入場所を知ったんだ西地区は浦原喜助の根拠地じゃないかああ浦原ね浦浦浦浦って浦原ぁ!?ルキアに義骸を渡したのも奴の計算でしたお前は文字通り奴のマリオネットだったんだよルキア君ってあいつが一番の悪モンじゃねえかどうしてくれるんだ!メロが極悪人だったのと同等の衝撃といいますか浦原ファンの腐女子の皆さんは怒り狂ったりしないんでしょうか心配です久保先生の身柄が。

うわああ、前回に増してオタクネタがてんこもり。恐らくジャンプ史上最も「萌え」という言葉が連呼された週だったんじゃないでしょうか今週は。悪いのは全て恐らくアシスタントが描いてるあの猫耳二人組なんですが、とことん付き合ってあげるブーブブ姉さんは素で危険だと思いました。
他にも同誌掲載の漫画からパクったネタ(拙者拙者詐欺)を用いていたり色々チャレンジャーな回でしたが、一番笑ったのは首領パッチのカルタネタだったりします。イジメにしても周到すぎるよ!

あ、結構いいかも。新キャラ。
「いい人っぽく見えて実は悪人」なんて↑二つ上の漫画とダダカブリのネタじゃなくて、「本当にいい人でもあり悪人でもある」ってのがありそうでなかった設定で新鮮。元ネタはジキルとハイドなんだろうけど、善性と悪性が完全にセパレートされた安易な二重人格キャラではなく、あくまでも同一人格のままでいい奴になったり悪い奴になったりするってのもポイント高い。


中世っぽい意匠をまとっている割に大時代的な人格のキャラが一人もいない(どいつもこいつも最近の高校生みたいな奴ばっかりだし)ってのは本作の弱点だったと思うんだけど、こういう系統のキャラクターがこれから量産されれば正統派ファンタジーとしての風格も少しづつ出てくるかも知れない。

↑の作品で、非常に人が悪いヒトが二人だけいます。誰でしょう?
1.ルフィ
2.ナミ
3.ユート
4.スマトラ沖地震の記憶が少しづつ遠のいてきた頃、おそらく当該事件にインスピレーションを受けたのだろう「大津波で都市大破壊の図」を喜々として描きだす尾田先生
5.甘い言葉でユートのスケート復帰を手伝うフリをしながら、ショートラックに転向させることでトレーナーとしての自らの名声を更に高める第一歩を踏み出そうとしている広村コーチ



・・・・あ、「デスノ」についてはちょっと書きたい事が多すぎるので明日更新します。
大場先生って本当にヒドい人だなあ。ストーリーテラーとしては天才的だけど。