火星の砂漠にて

デミルは四散したメディの肉片を寄せ集め、人の形に組み立て直した。それはどうみても廃工場にこびりついた赤錆のような色と墓守に見捨てられた菊のような腐臭を発するただのゴミでしかなかったが、デミルはそれを生きていた当時の彼女のように笑わせ、怒らせ、泣かせ、微笑ませるためにありとあらゆる手段を尽くした。肉片の周りに魔法陣を書き、自分で考えた奇怪な呪文を唱えてみた。気難しい年寄りも思わず振り返りそうになるような気さくな声で話し掛けてみた。自分で作った恥ずかしい詩を朗読して、からかいの言葉が沸いてくるのを待った。初めて結ばれた夜にしたのと同じくらい甘やかな口づけを交わして、自分達の愛を確認するように耳もとで囁いてみた。


デミルの健気な思いに、石は泣き、星は目を逸らし、空は哀れむような目つきで二人を見つめた。だが、大地は終始黙ったままだった。デミルの獣のような雄叫びを、火星に生きる全ての人間達に聞かせてやるために、彼はわざと口を噤んだのだ。