週刊少年ジャンプ2005年度23号感想(ネタバレ注意!)

武装錬金」が終了してやる気が50%減です。
和月先生が赤マル掲載の最終回の執筆に頑張っておられるだろう上で、某作品が連載終了後の唐突なアニメ化を達成し、やはり世の中は我々を中心に回ってはいないのだと痛感させられました。

あのスナフキンは女の子でしたか。そういえばこの作者さん、読みきり時代も百合っぽいネタ好きだったなあ。


なんかお約束的に「君の考えた妖怪募集!」な企画が編集部側から打ち出されてますが(「僕の考えた武装錬金」ってどうなったんでしょうね)、この漫画って幼年読者には普通に「ホラー」として読まれてるんでしょうか。美大出身だという作者さんの絵柄は線が完成されすぎててあんまり「怖い」と思った事がないのですけど*1。怖さそのものよりも、映画「学校の怪談」的なアドベンチャーノリが好かれてるのかな?

ガイ先生はギャグキャラなのかただの三枚目なのか未だに掴みかねます。必殺技発動のシーンとか、あまりにシュールすぎてギャグ漫画そのものなんですが、岸本先生がどこまでギャグとして描いているのか全くわからないのが混乱の原因です多分。

アクア・ラグナでスマトラ地震をネタにした竹箆返しのようにまたも展開が時事と被ってしまった尾田先生。「制御不能の恐怖の暴走列車」とか全く洒落になっていないのですが、やっぱり天才というのはどこかで周囲の世界と同期的にリンクしてしまうものなのでしょうか。宇宙から選ばれし者しか受信できない電波が照射されているのかも知れません。ビビビビ

  • 大宮ジェット

「ジャンプ」の読み切りを面白いと思った事はあまり無いのですけれど、これは今週の掲載作品の中で一番面白かったです。
苛められっこを助けるヒーローに、怠け者っぽい天才科学者(?)の指揮官、ヒロインは当然のごとく美少女で、主人公と因縁を持つ妙に小物感漂うチンピラが悪役。作者さんがどこまで上記したような「特撮ヒーローもののお約束」を意識しつつ描いているのかは分からないのですが、ここまでベタにツボを抑えた堅実な作りの読みきりは久しぶりに見ましたよ。


武装錬金」が終わった翌週にこれを掲載したのがジャンプの良心だと言ったら言い過ぎかも知れませんが、今後とも(たとえ人気は出なくても)過去の少年漫画誌が作り上げてきたオールディッシュなヒーローの形態はどこかで継承されていかねばならないと思いますし、こういう作品がちゃんと評価される土壌が(メインでなくてもいいからどこかに)欲しいところだなあ、と思います。


あと、この人セリフ回しが異様に上手いですな。ネームのリズム感だけなら「銀魂」にも引けを取っていないのでは?長台詞が多いのに全く違和感なくするする読めました。

最終回でした。


ファンの方には申し訳ないのですけど、最後の最後まで恐らく藤崎先生が理想としただろう形態と実際の作品のギャップが埋まらなかったなあという気がしています。「世界を救うため願いを叶える」というテーマはラディカルな善意に溢れていますし、実際今週号で描かれたハッピーエンドはそれなりに感動的なものになっているのですけど、藤崎先生が描写の力点をおいているのは明らかにそこではないというか。
これだけだと意味不明だと思いますので具体的な例を挙げますが、今週号で漫画家としての藤崎先生の本領が最も発揮されているシーンは、破壊されたキクがコトと共に奈落の底に落ちていくシーンだと思うのですけど、あれは「世界のために皆で助け合おう」という本作が持っていたテーマとは全く逆のダークで破滅的な展開でしょう。で、それを経た上で肝心の「シオが最後に願いを叶えて皆を救う」シーンがまともに描写されずにカットされているという・・・・・・。本当に「世界を救うため(略)」というテーマを描きたいのならば、力を入れて描写しなければならないのは明らかに後者のハズで、このあたりの描写の「ズレ」が「理想と現実の埋まらないギャップ」として作品そのものを引き裂いていたように感じてなりませんでした。


これは藤崎先生のヒット作「封神演義」でも見られた傾向で、聞仲編などはジャンプ漫画の枠組を突き破ったようなダークネスな展開で読者を魅了したにもかかわらず、物語は結局優等生的な結末に収斂させられてしまいました。まあ「封神」は原作があったので仕方がない面もあったのですが、漫画家としての藤崎先生は明らかに邪悪でカタストロフなテーマを描くのに才能を発揮しているにもかかわらず、悪意全開の物語作りが出来ない「ジャンプ」の誌風にその作風を歪められている面が、本作「ワークワーク」では随所に見られたのが人気低迷の原因だったのではないかと思います(この辺の事情は和月先生のそれとも共通する面があるのですが)。


和月先生と共に、「本当に描きたい(描くべき)テーマ」を自由に描ける雑誌に移籍した方がいい方なのかも知れませんね。藤崎先生のマニアックな作風は元々ジャンプの一般性と根本的に反りが合わない点もありましたし(そう考えると「封神」の大ヒットはやっぱり不思議。単に同人人気だけの話ではなかったような気がしますが・・・・)。

*1:僕は人間の感じる恐怖は対象への想像力から生まれると考えているので、完成度の高い絵=視覚情報はかえって恐怖感を阻害してホラーの演出には逆効果だと思っています。作品そのものの面白さとは別の話ですが